落ち着いたホテルの空間と丁寧に仕事をするスタッフを、オレンジの光がつなぐ

若者に寄せた1本が客単価を壊す── 採用SNSの設計

採用の発信は、既存顧客にも届く。ブランドを守り、選ばれるための順番。

更新 2026.11.02読了目安 約9分

この記事の結論30秒で分かります

  • 2024年の調査では、SNSで就活情報を集める25卒学生は59.6%、新卒採用にSNSを活用する企業は28.6%。対象が異なる調査です。
  • フォローせずに企業を調べる学生もいます。フォロワー数だけで採用の成果を判定しません。
  • ブランド、来てほしい人、指標、確認ルールを決めてから、投稿を増やします。
  • 採用単価・辞退率・定着率に加え、本業の顧客の反応にも目を向けます。
  • 投稿を続けるには、担当者の頑張りに頼らず、型と分担を先に決めます。

採用の1本を、お客様も見ている。

「採用のために、うちで流行りの動画を撮るのは難しい。お客様も見ていますから」。高級ホテルの採用担当者が、こうした懸念を持つのは自然なことです。

格が客単価を支えている業態では、採用のために出した1本も、本業の価格の納得感に関わります。たとえば応募が10件増えても、その発信によって予約単価が2%下がるなら、採用側の数字だけで成功とは判断できません。この数字は考え方を示す仮定で、実際の事例や予測ではありません。

ただし、結論が「やらない」になると、別の機会を逃します。求職者が会社を調べに来たとき、働く様子や職場の情報がなければ、判断材料を渡せません。

この記事は、その間を通す順番を書きます。流行の表現に寄せる前に、ブランドを守りながら採用につなげるための設計を整えます。

求職者は見ている。企業は置いていない

i-plugの2024年の調査では、就職活動でSNSを活用して情報収集する25卒学生は59.6%。一方、新卒採用でSNSを活用する企業は28.6%でした。

学生の情報収集と、企業の採用発信
25卒学生:SNSで就活情報を収集59.6%
企業:新卒採用にSNSを活用28.6%

出典:i-plug「就職活動におけるSNSの活用状況に関する調査」(2024年2月20日公表)。学生はOfferBox登録の25卒1,031人、2024年2月1〜3日調査。企業は新卒採用を実施する259社、同年1月24〜29日調査。企業の活用率は非活用71.4%の補数。両者は異なる対象への設問です。

この結果からは、学生の情報収集に対して、企業の採用発信には整備の余地があると読めます。ただし、「SNSを採用に使っていない」と「企業に採用情報が何もない」は同じ意味ではありません。採用サイトなどに情報がある企業も含まれます。また、この数字だけで「ブランドを崩したくないから使わない」と理由までは判断できません。

採用を取り巻く環境にも目を向けます。厚生労働省の公表では、2026年4月の有効求人倍率は1.18倍。東京商工リサーチの集計では、2025年の「人手不足」関連倒産は397件で、同社の調査で過去最多となりました。対象は負債1,000万円以上の倒産のうち、求人難・従業員退職・人件費高騰によるものです(後継者難を除く)。

学生は「フォローせずに見る」

トガルが2025年10月に公表した21〜23歳の学生101人への調査では、企業のInstagram公式アカウントをフォローしていない人は78.2%でした。調査は、フォローせず閲覧して情報を得る行動も報告しています。

これは、すべての求職者が同じ行動をするという意味ではありません。それでも、フォロワー数だけでは、調べられている量や採用への貢献を捉えきれないことは、設計の前提にできます。

採用SNSでつくりたいのは、調べられたときに、応募するかどうかを判断できる状態です。人数を増やすことだけを目標にすると、仕事の理解に必要な発信より、反応を取りやすい投稿が優先されかねません。

採用への貢献を確かめる指標これだけで成否を決めない指標
応募経路として名前が挙がった数フォロワー数
選考中の辞退率・内定辞退率投稿本数そのもの
1人採るのにかかった金額(採用単価)いいね数の合計
入社後半年・1年の定着率再生回数だけの合計
プロフィールから求人ページへの遷移率他社アカウントとのフォロワー比較

右側の数字にも、運用の状態を見る役割はあります。ただし、採用成果の代わりにはしません。採用単価は費用に含める範囲をそろえ、辞退率や定着率は対象者と集計期間を決めて比較します。SNS以外の採用条件の変化も一緒に記録してください。

どのSNSを見られているか

求職者がふだん使うSNSと、業界研究のために開くSNSは分けて考えます。一般的な利用率を、そのまま採用の媒体選びに置き換えないことが大切です。

用途調査で挙がったSNS
ふだんの利用(Z世代)YouTube/LINE/Instagram/X/TikTokなど
業界研究のための利用X 38.7%/YouTube 27.4%/Instagram 25.5%/TikTok・LINE 各11.3%

日常利用の参考:サイバーエージェント次世代生活研究所「2025年Z世代のSNS利用率」。上段は利用媒体の例で、順位表ではありません。業界研究:トガル株式会社の調査・Q3(2024年1月、東京・愛知・大阪に住む22〜23歳の学生101人。2024年4月23日公表)。異なる調査のため、数値を直接比較するものではありません。

この業界研究の調査で最多はXです。YouTubeも27.4%で使われており、少し長い尺で仕事内容を確かめられる動画を置く選択肢があります。縦型の本数を増やす前に、来てほしい人がどこで何を確かめるのかを整理してください。

守るべきブランドから投稿まで、5つの段階を順につなぐ階段
04

ブランドを下げないための順番

守るものを決めてから、伝えるものを増やす。

本数を積む前に、4つを決める

採用向けに作った投稿も、顧客や取引先に届きます。高級ホテル、料飲、美容など、サービスへの期待が価格を支える業態では、採用の表現と本業の体験に一貫性が必要です。

砕けた表現そのものが悪いわけではありません。自社の約束と合わない表現を、流行しているという理由だけで選ぶことが問題です。CARASUでは、次の順番で設計することを提案します。

  1. 守るべき格を言語化する

    言葉・映像のトーン、出してよい場所と出さない場所を決めます。顧客に約束している体験から考えます。

  2. 来てほしい人を、具体的な1人として書く

    どんな仕事を望み、何を不安に思う人か。全員向けの曖昧な言葉を減らします。

  3. 指標を選び直す

    応募経路・辞退率・採用単価・定着率など、採用への貢献を追える数字を置きます。

  4. 事故を防ぐルールを敷く

    最終確認者、撮影しない場所、顧客や個人情報の映り込みを確認する手順を決めます。

  5. そのうえで本数を積む

    表現と確認の基準をそろえてから、継続して情報を届けます。

「良く見せない」という選択

採用広報では、魅力と一緒に仕事の難しさも伝えます。繁忙期の忙しさ、向いていない人の特徴、対応できない希望。都合の悪いことを隠すより、応募前に判断できる材料として置くことを考えます。

それによって応募数が減ることもあります。一方、入社前後の認識のずれを減らす助けになります。応募が減れば必ず辞退率や早期離職が下がる、という保証ではありません。実際の数字と面接での反応を見て、内容を直していきます。

採用単価は、一定の範囲で集計した採用費用を採用人数で割って測ります。応募数だけを増やしても、採用に至らなければ単価が下がるとは限りません。応募を増やす施策と、採用単価を下げる施策を区別してください。

関連記事:良く見せると、応募が増えて、辞める人が増えます →

素材、編集用のレイアウト、投稿用のカードを3つの工程に分けた制作机
06

続かない問題を、構造で解く

毎回ゼロから考えない。型と分担を先につくる。

担当者のやる気だけに頼らない

運用が止まったときは、企画・撮影・編集・投稿が1人に集中していないかを点検します。本業と兼務しながら毎回すべてを考える形では、続ける負担が大きくなります。

  • 撮影しなくても出せる型を決める。社員の一問一答、1日の流れ、数字の紹介、設備や制度の説明を、文章や既存素材でも作れる形にします。
  • 素材を集める日と、出す日を分ける。たとえば週1回まとめて撮影し、平日は用意した内容を投稿します。頻度は現場の負担に合わせます。
  • 最終確認をする人を1人決める。必要な関係者への確認は保ちつつ、誰がいつ判断するかを明確にします。

ネタは毎回ゼロから考えるものではなく、決めた型に情報を入れられるようにします。素材の保管場所と確認手順も残しておけば、担当者が替わったときに引き継げます。

AI検索にも置いておく

企業の情報を探す手段は、検索エンジンだけではなくなっています。トライベックの「BtoBサイト調査2026」では、業務上の情報収集でAI検索を利用する人は約65%。HubSpot Japanの2026年調査では、業務用商品・サービスの購買検討でChatGPTを「頻繁に」または「ときどき」利用する人は58.0%でした。

トライベック:2026年4月10〜27日、13分野のBtoB製品・サービスの購入関与者7,700人。HubSpot Japan:2026年6月11〜16日、従業員50人以上の企業に勤務し、直近12カ月以内のBtoB購買に関与した1,573人。いずれもBtoB購買の調査で、求職者のAI利用率を示すものではありません。

この変化を踏まえたCARASUの提案は、採用情報も、人が読みやすく、情報の意味や根拠を把握しやすい形に整えることです。

  • 要点を冒頭にまとめる
  • よくある質問と回答を本文にも載せる
  • 更新日を明示し、仕事内容や制度の変更を反映する
  • 数字に出典・調査時期・対象を添える

こうした整理は、読者が確かめる際にも役立ちます。AIからの引用や検索順位を保証する方法ではありません。

まず整える範囲は、小さくてよい

3か所

プロフィール・固定表示・直近の投稿から点検する。

半日

守るべき格と、来てほしい人を話し合う目安。

0円〜

社内で整理すれば、追加の外注費なしでも着手できる。

CARASUの進め方の提案です。「3か所だけが見られる」という調査結果ではありません。半日は議論の目安で、必要な時間は会社によって異なります。0円は追加外注費の例であり、社内人件費・機材費・制作費を含めた総費用ではありません。

まとめ

  • 学生のSNSでの情報収集に対し、企業の採用発信には整備の余地がある。
  • フォローせずに見る人もいるため、フォロワー数だけで成果を決めない。
  • 採用単価・辞退率・定着率と、本業の顧客の反応を確認する。
  • ブランドを先に定義し、対象者・指標・確認ルールを決めてから投稿を増やす。
  • 投稿を続ける仕組みは、型と分担からつくる。

最初の仕事は、若者に寄せた動画を1本作ることではありません。自社が守るものと、求職者に渡す判断材料をそろえることです。

出典・参考資料

  1. i-plug「就職活動におけるSNSの活用状況に関する調査」(2024年2月20日公表)。学生・企業のSNS活用率。
  2. トガル「就活におけるInstagram活用の実態」(2025年10月10日公表)。21〜23歳の学生101人。企業アカウントのフォロー状況。公開リリースには実査期間の記載なし。
  3. トガル「Z世代がSNSを活用して行う就職活動に関する調査」(2024年4月23日公表)。業界研究に使ったSNS・Q3。
  4. サイバーエージェント次世代生活研究所「2025年Z世代のSNS利用率」。日常利用の参考資料。
  5. 厚生労働省・2026年5月29日大臣会見概要。2026年4月の有効求人倍率1.18倍。
  6. 東京商工リサーチ「2025年の『人手不足』倒産は過去最多の397件」(2026年1月7日公表)。2025年1〜12月、負債1,000万円以上、後継者難を除く。
  7. トライベック「BtoBの情報収集でも進む『AI検索』活用、約65%が利用」(2026年7月2日公表)。
  8. HubSpot Japan「日本のBtoB購買に関する意識・実態調査2026」(2026年7月16日公表)。

資料確認日:2026年10月30日。設計の順番、運用方法、初期点検の範囲はCARASUの提案です。

よくある質問

採用SNSは、まず何から始めればいいですか。

投稿を増やす前に、会社が守るべきブランドと、来てほしい人を1枚に言語化します。そのうえでプロフィール・固定表示・直近の投稿を点検し、どんな会社で、どんな仕事をするのかが伝わる状態をつくってください。フォローせずに見る人にも判断材料を渡すことが目的です。

フォロワー数を目標にしてはいけないのはなぜですか。

フォローせずに企業アカウントを閲覧する人もいるため、フォロワー数だけでは閲覧や採用への貢献を測れないからです。参考指標として確認しつつ、応募経路として名前が挙がった数、求人ページへの遷移率、選考中の辞退率、採用単価、入社後の定着率を併せて追います。

採用のために砕けた投稿をすると、ブランドが下がりませんか。

投稿の内容によっては、そのリスクがあります。高級ホテルや料飲、美容など、サービスへの信頼が価格を支える業態では、採用向けの発信も顧客の目に触れます。守るべき言葉・映像のトーン・撮影範囲を先に定義し、その中で若手に伝わる表現を探してください。

投稿が続きません。どうすれば運用が止まらなくなりますか。

企画・撮影・編集・投稿が1人に集中していないかを見直します。社員の一問一答、1日の流れ、数字や制度の紹介など、撮影しなくても出せる型を用意し、素材を集める日と投稿する日を分けます。最終確認をする人と締切も決め、担当者が替わっても引き継げる形にします。