ロゴとコピーでは変わらない ── 採用ブランディングの4層

「採用ブランディングをやりたい」の次に出てくるのが、採用サイトの作り直しとキャッチコピー。どちらも間違いではありませんが、順番としては3番目です。

Key figure
0 採用ブランディングの4層のうち、①誰を採るか ②何を約束するか には費用がかからない。必要なのは経営層を含めた半日の議論だけ。制作費が出るのは③から。
出典:carasu の整理
こんな状態なら、この記事です
  • 採用サイトを作り直したのに、応募の質が変わらなかった
  • 担当者3人に「どんな人を採らないか」を聞くと、答えが違う
  • 発信している内容を在籍社員に聞くと「実際は違います」と言われる

3つ目が出た場合、外向きの発信を強めるほど早期離職が増えます。順番を戻してください。

01
採用ブランディングの構成要素が4層に分解できる
02
自社がどの層で止まっているかが特定できる
03
他社の成功事例を、真似できる形で読めるようになる
結論だけ先に

採用ブランディングは、制作物を作る仕事ではない。実体は4層あり、①誰を採るかを決める②何を約束するかを決める③どこで見せるかを決める④中で守られている状態を作る、の順に積む。SNSは③の一部でしかない。多くの会社は①を飛ばして③から始めるため、誰に向けた発信か決まらないまま素材だけが増える。事例を読むときは、見えている③ではなく、その会社が①②で何を決めたかを推測する。

  • 採用ブランディングは制作物ではなく4層の意思決定
  • SNSは③「どこで見せるか」の一部にすぎない
  • ①誰を採るかを飛ばすと、③で何をやっても効かない
  • ④中で守られていないと、外向きの発信は退職者の言葉で否定される

「採用ブランディングをやりたい」という相談を受けたとき、最初に確認することがあります。

何から手をつけようとしていますか。

返ってくる答えの多くは「採用サイトの作り直し」か「コンセプトとキャッチコピー」です。どちらも間違いではありませんが、順番としては3番目です。

そして順番を飛ばした場合に何が起きるかは、はっきりしています。何を作るべきかが決まらないまま、制作費だけが出ていきます。

4つの層

誰を採るかを決める
職種・経験・年齢層だけではありません。「この人は採らない」を決めるところまでが①です。 未経験を採るのか採らないのか、独立志向の人を歓迎するのかしないのか。ここを決めないと、以降のすべてが曖昧になります。費用はかかりません。必要なのは半日の議論です。
何を約束するかを決める
入社した人に何を提供するのか。給与か、技術か、裁量か、安定か、時間か。すべてを約束することはできません。 だから②は、何を約束しないかを決める作業になります。ここも費用はかかりません。ただし経営層の参加が必須です。
どこで見せるかを決める
採用サイト・求人媒体・SNS・動画・説明会・現場見学。ここで初めて制作費が発生します。SNSはこの層の一部です。 ①②が決まっていれば、どの媒体に何を置くかは自動的に決まります。
中で守られている状態を作る
②で約束したことが、社内で実際に守られているか。ここが崩れていると、③でどれだけ良い発信をしても、退職者の言葉で否定されます。採用ブランディングの成否は、最終的にここで決まります。
① 誰を採るかを決める(費用ゼロ・半日) ② 何を約束するかを決める(費用ゼロ・経営層が必須) ③ どこで見せるかを決める(ここで制作費が発生) 採用サイト/求人媒体/動画/説明会/現場見学/ SNS ←ここ ④ 中で守られている状態を作る 崩れていると、③の発信は退職者の言葉で否定される 多くの会社は①②を飛ばして③から始める。だから「投稿しているのに効かない」が起きる。
図1:採用ブランディングの4層。SNSは③の一部で、下から積む順番が決まっています。
要点

SNSは③の一部です。つまり、①②を決めずにSNSを始めると「誰に向けて何を約束する発信なのか」が決まらないまま素材だけが増えます。これが「投稿しているのに効かない」の正体です。

上2層は費用がかからない。飛ばす理由がない

4

採用ブランディングの実体。SNSは3層目の一部

carasu の整理

0

①誰を採るか ②何を約束するか にかかる費用

3つ以内

約束することの上限。全部は約束できない

①②を決める議論の所要時間(経営層の同席が必須)

どの層で止まっているかを判定する

自社がどこで止まっているかの判定
  • 「この人は採らない」という基準を、担当者3人に聞いて同じ答えが返るか(①)
  • 「入社したら何が得られるか」を1文で言えるか(②)
  • その1文が、採用サイト・SNS・面接で同じ内容になっているか(③)
  • その1文を在籍社員に聞いたとき、「そうですね」と返るか(④)

4つ目で「いや、実際は違います」と返る場合、③への投資はいったん止めたほうがいい。 外向きの発信を強めるほど、入社後の落差が大きくなり、早期離職と悪評が増えます。

注意

④が崩れている状態で採用発信を強化するのは、穴の空いたバケツに水を足す作業です。しかも入った人が辞めるときに、その落差が言葉になって外に出ます。④は採用の施策ではなく、労務・評価・現場運営の話です。 採用担当だけでは直せません。だから経営層を①②の議論に入れる必要があります。

①②の議論を半日で終わらせる

会議の形を決めておきます。参加者は経営層1名以上、現場責任者、採用担当。

時間 問い
0:00〜0:30 直近3年で「採って良かった人」を3名挙げる。共通点は何か
0:30〜1:00 直近3年で「合わなかった人」を3名挙げる。共通点は何か
1:00〜1:30 上の2つから「採る人/採らない人」を文章にする(①)
1:30〜2:00 在籍者に「なぜ続けているか」を聞いた答えを並べる
2:00〜2:45 そこから「約束すること」を3つ以内に絞る(②)
2:45〜3:00 約束しないことを明記する

「合わなかった人」から入るのが要点です。 理想像から始めると、どの会社も似た結論(素直で前向きで成長意欲がある)になり、使えません。実際に合わなかった人の共通点には、その会社固有の輪郭が出ます。

採用ブランディングで最初に決めるのは、誰を採るかではありません。
誰を採らないかです。

事例の読み方

「採用ブランディング 成功事例」はよく検索されます。ただし、事例の見えている部分を真似しても再現しません。

事例で見るべき
  • 何をやめたか(訴求・対象・媒体)
  • 誰を採らないと決めたか
  • 約束を3つ以内に絞れているか
  • 社内の制度を変えたか(④)
真似しても効かない
  • 採用サイトの見た目
  • キャッチコピーの言い回し
  • 投稿の本数・頻度
  • 使っている媒体の組み合わせ

ロゴとキャッチコピーはいつ作るか

作ってよいのは②のあとです。そして、作らなくても採用ブランディングは成立します。

キャッチコピーが効くのは、②で決めた約束が短い言葉に収まる場合だけです。収まらないなら、無理に作らずに文章で伝えてください。言葉を作ることが目的になった瞬間に、中身が薄まります。

まとめ

  • 採用ブランディングは制作物ではなく、4層の意思決定
  • ①誰を採るか ②何を約束するか ③どこで見せるか ④中で守られているか
  • SNSは③の一部。①②を飛ばすと素材だけが増える
  • ①②は費用ゼロ・半日で決まる。ただし経営層の参加が必須
  • ④が崩れていたら、③への投資を止める。落差は退職者の言葉になる
  • 議論は「合わなかった人の共通点」から始める
  • 事例は「何をやめたか」を読む。見た目を真似しても再現しない

エンプロイヤーブランディングとの違いは、関連記事にまとめています。

よくある質問

採用ブランディングとは何ですか。
求職者から見たときの自社の位置づけを意図的に作り、応募の質・内定承諾率・定着率を上げる活動です。ロゴやキャッチコピーの制作はその一部で、本体は4つの意思決定です。誰を採るか、何を約束するか、どこで見せるか、そして約束が社内で守られている状態を作るか。制作物から始めると、何を作るべきかが決まらないまま進みます。
採用ブランディングと採用広報の違いは何ですか。
採用ブランディングが「何を約束するかを決めること」、採用広報が「それを伝えること」です。順番は前者が先ですが、実務では同時に進むことも多く、その場合は伝えながら約束を絞り込む形になります。ただし、約束を決めずに伝え続けると内容が毎回変わり、求職者から見て一貫しない会社になります。
予算はどのくらい必要ですか。
①と②には費用がかかりません。必要なのは経営層を含めた半日〜1日の議論です。費用が発生するのは③(採用サイト・動画・SNS運用)からで、ここは規模によって数十万円から数百万円まで幅があります。①②を飛ばして③に予算を投じるのが、最も損失の大きい進め方です。
他社の成功事例をそのまま真似できますか。
見えている部分(③の制作物や投稿)は真似できますが、成果は再現しません。事例で効いているのは、その会社が①②で何を捨てたかです。たとえば「未経験歓迎をやめた」「給与訴求をやめた」といった決定が効いていて、制作物はその結果です。事例を読むときは、何をやったかより何をやめたかを探してください。
Sources 出典
  1. 採用ブランディングの考え方と事例(HRMOS/renue) https://hrmos.co/trend/talent-management/8775/
  2. 採用課題ランキング(Bellwether/キャリタス 緊急企業調査) https://www.career-tasu.co.jp/press_release/12383/
  3. エンプロイヤーブランディングのKPIと効果の出方(クイック採用サロン) https://saiyo-salon.jp/knowhow/employer-branding/
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