「応募が来ない」と「採ったのに辞める」は、打つ手が逆です
この2つを同じ言葉で語ると、間違った施策に予算がつきます。困っているのが「来ない」なのか「辞める」なのかで、先にやることが入れ替わります。
- 採用を強化しているのに、在籍人数が増えない
- 離職率が業界平均より高いことが分かっている
- 社内向けの施策に予算が付かない
1つ目と2つ目が同時に起きている場合、順番が逆になっています。
採用ブランディングは社外の候補者を対象に採用の成果を狙う短中期の活動、エンプロイヤーブランディングは在籍者を含めた「働く場所としての評価」を対象にする中長期の活動だ。対象・期間・KPI・主管部署がすべて違う。判定は簡単で、離職率が業界平均より高い会社はエンプロイヤーブランディングが先、応募数が足りない会社は採用ブランディングが先になる。順番を逆にすると、採った人が辞め続ける。
- 対象が違う。採用ブランディングは候補者、エンプロイヤーブランディングは在籍者を含む
- 期間が違う。前者は3〜12か月、後者は1〜3年で効く
- 離職率が高い会社はエンプロイヤーブランディングが先
- 名前の定義に時間を使わない。決めるのは「どちらを先にやるか」だけ
この2つの言葉は、ほぼ同じ意味で使われています。実務上はそれで困らない場面も多いのですが、予算を取るときと、効果を測るときに困ります。
理由は、対象・期間・KPI・主管部署が全部違うからです。
そして実務でいちばん大きな違いは、失敗の形です。「応募が来ない」で困っている会社と、「採ったのに辞める」で困っている会社は、打つ手が逆になります。
表で整理する
| 採用ブランディング | エンプロイヤーブランディング | |
|---|---|---|
| 主な対象 | 社外の候補者 | 在籍者+社外の候補者 |
| 目的 | 採用の成果(応募の質・承諾率) | 働く場所としての評価(定着・推奨) |
| 効くまでの期間 | 3〜12か月 | 1〜3年 |
| 主なKPI | 応募の質・内定承諾率・採用単価 | 定着率・社員の推奨度・退職理由の構成 |
| 主管 | 人事(採用) | 経営・人事(制度・評価・労務) |
| 手段 | 採用サイト・SNS・動画・説明会 | 制度・評価・働き方・社内の伝達 |
| 失敗の形 | 応募が来ない/来ても合わない | 採ったのに辞める |
いちばん実務的な違いは最後の行です。「応募が来ない」で困っている会社と、「採ったのに辞める」で困っている会社は、打つ手が違います。同じ言葉で語ると、間違った施策に予算が付きます。
同じ定義の業界値と比べてください。業界平均より高ければ、社内側(エンプロイヤーブランディング)が先です。
出典3(厚生労働省)。全産業の年間離職率は一般的な水準。
どちらを先にやるか ―― 離職率で判定する
判定に長い分析は要りません。離職率だけで決まります。
順番を逆にした場合に起きることは決まっています。採用が上手くなり、辞める人が増えます。 採用力が上がると母集団が増え、合わない人まで通ってしまうためです。離職率が高い会社ほど、採用の改善だけでは悪化します。
社内向けの施策を、採用予算で説明する
エンプロイヤーブランディングは、社内の話なので採用予算では通りにくい。採用の数字に翻訳してください。
| 社内の施策 | 採用の言葉に翻訳すると |
|---|---|
| 評価基準の明文化 | 面接で「何で評価されるか」に答えられるようになる |
| 入社後3か月の受け入れ設計 | 早期離職が減り、在籍月あたり採用費が改善する |
| 現場の負荷の平準化 | 「忙しすぎる」という口コミが減る |
| 社員紹介制度 | 採用単価がもっとも低い経路が使えるようになる |
| 退職理由の記録と共有 | 発信の内容が実態に合い、ミスマッチが減る |
最後の行が、この記事で最も実務的な提案です。 退職理由をきちんと記録している会社は、採用発信の精度が上がります。辞めた理由は、次に採るべき人の輪郭を教えてくれます。
同じ理由で辞める人を、また採ります。
用語の議論に時間を使わない
最後に、実務上の助言をひとつ。
社内でどちらの言葉を使うかは、どちらでも構いません。 統一されていれば十分です。定義の議論が長引いているときは、たいてい「どちらを先にやるか」が決まっていないことが原因です。
- 自社の離職率と業界平均を並べた(数字を出した)
- 先にやるのは社内側か、採用側かを決めた
- 社内側の施策を、採用の数字に翻訳して説明する準備をした
まとめ
- 対象が違う。採用ブランディングは候補者、エンプロイヤーブランディングは在籍者を含む
- 期間が違う。前者は3〜12か月、後者は1〜3年
- 失敗の形が違う。「応募が来ない」と「採ったのに辞める」
- 判定は離職率で行う。業界平均より高ければ社内側が先
- 順番を逆にすると、採用が上手くなって辞める人が増える
- 社内の施策は、採用の数字に翻訳して予算を取る
- 用語の定義に時間を使わない。決めるのは順番だけ
4層のうちどこで止まっているかは、関連記事にまとめています。
よくある質問
エンプロイヤーブランディングとは何ですか。
どちらを先にやるべきですか。
違いを社内で説明する必要はありますか。
エンプロイヤーブランディングの効果はどう測りますか。
- エンプロイヤーブランディングのKPIと効果の出方(HRMOS/renue/クイック採用サロン) https://hrmos.co/trend/talent-management/8775/
- 採用課題ランキング(Bellwether/キャリタス 緊急企業調査) https://www.career-tasu.co.jp/press_release/12383/
- 新規学卒就職者の離職状況(厚生労働省) https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177553_00007.html