良く見せると、応募が増えて、辞める人が増えます

都合の悪いことを先に書くと、応募は減ります。そのぶん辞退と早期離職はもっと減ります。ただし評価する数字を先に変えないと、この施策は選べません。

Key figure
33〜35% 新規大卒者の3年以内離職率は33〜35%前後で推移。宿泊業・飲食サービス業では5割を超える。相性ではなく、入社前に渡した情報の設計で決まっている。
出典:出典1・2
こんな状態なら、この記事です
  • 入社した人から「思っていたのと違う」と言われた
  • 配属が決まってから、話が違うと言われた
  • 面接で会社の良いところしか話していない

3つとも、採用側の情報設計で起きています。つまり直せます。

01
ミスマッチの発生源が4種類に整理できる
02
都合の悪いことの「書き方」が分かる
03
応募が減っても正しいと説明できるようになる
結論だけ先に

新規大卒者の3年以内離職率は33〜35%前後で推移し、宿泊・飲食では5割を超える。ミスマッチは相性ではなく、入社前に渡した情報の設計で決まる。発生源は4つあり、いずれも採用側が作っている。対策は「良く見せない」こと。都合の悪いことを先に開示すると応募数は落ちるが、辞退率と早期離職率はより大きく落ちる。ただし書き方があり、単に欠点を並べると応募がゼロになる。事実と対処を並べて書く。

  • ミスマッチの発生源は4つ。すべて採用側が作っている
  • 都合の悪いことを開示すると、応募は減り、辞退と早期離職はもっと減る
  • 欠点を単独で書かない。事実と、それに対する会社の対処を並べる
  • 評価する数字を「応募数」から「在籍月あたり採用費」に変える

新規大卒者の3年以内離職率は、33〜35%前後で推移しています(出典1・2)。宿泊業・飲食サービス業では5割を超えます。

この数字を「若い人がすぐ辞める時代だから」と説明することもできます。ただしそれでは、担当者に打つ手がありません。

別の説明をします。ミスマッチは、入社前に渡した情報の設計で決まります。 そして情報を設計しているのは、採用側です。つまり直せます。

発生源は4つ

仕事の中身を抽象的に伝えた
「企画から携われます」「幅広い業務を経験できます」。この書き方は、読んだ人が自分の都合の良いように解釈します。実際の1日を時間で見せると、この誤解は消えます。
都合の悪い条件を伝えなかった
繁忙期の残業、土日出勤、転勤の可能性、最初の半年の雑務。伝えなくても入社後に必ず分かります。伝えなかったことが、辞める理由になります。
面接で会社側だけが評価した
候補者も会社を評価しています。片方向にすると、候補者は聞きたいことを聞けないまま入社します。聞けなかった疑問は、入社後に不満に変わります。
配属先が決まる前に入社を決めさせた
とくに多店舗・多拠点で起きます。どの店舗・どの部署かで働き方が大きく違うのに、そこが未定のまま承諾を取ると、配属の時点でずれます。
要点

4つとも、採用側の情報設計で起きています。つまり直せます。 相性の問題として扱うと直せません。

「良く見せない」という選択

対策は、都合の悪いことを先に出すことです。効果の方向はこうなります。

情報を正確に開示したときの各指標の動く方向
応募数減る
辞退率より減る
早期離職最も減る

※概念図。棒の長さは効果の大きさの相対関係を示すもので、実測値ではありません

注意

この施策は応募数を目標にしている組織では選べません。 応募が減るからです。導入するなら、評価する数字を先に「在籍月あたり採用費」または「入社後3か月の在籍率」に変えてください。数字を変えないまま施策だけ入れると、3か月後に元に戻されます。

就職後3年以内の離職率
新規大卒(全産業)33.8%
新規高卒(全産業)37.9%
宿泊・飲食サービス業の大卒55.4%

業界によってここまで違います。自社の数字は、同じ定義の業界値と比べてください。

出典1・2(厚生労働省。卒業年次は公開時点の最新値で確認)

書き方 ―― 事実と対処を並べる

欠点を単独で書くと、応募が過度に減ります。必ず対処と並べてください。

✕ 書かない ✕ 欠点だけ ◯ 事実と対処
(残業に触れない) 「繁忙期は残業が多いです」 「繁忙期(7〜9月)は残業が月30時間程度あります。閑散期は定時退社が基本で、連休も取りやすくなっています」
「幅広い業務を経験」 「最初は雑務が多いです」 「最初の6か月は準備と片付けが中心です。7か月目から担当を持ちます(前任者は5か月目でした)」
(転勤に触れない) 「転勤があります」 「3年に1回程度、県内の他店舗への異動があります。引っ越しが必要な場合は住宅補助が出ます」

「◯」の列に共通しているのは、数字が入っていることです。 「多い」「少ない」では判断できません。数字が入ると、読んだ人が自分で判断できるようになります。

良く見せると、応募が増えて、辞める人が増えます。
正確に見せると、応募が減って、残る人が増えます。

開示する5項目

入社前に必ず開示する5項目
  • 1日の実際の時間の流れ(始業から終業まで、休憩と移動も含む)
  • 繁忙期の実態(時期と、そのときの労働時間)
  • 最初の6か月に任される仕事の範囲(できないことも書く)
  • 配属の決まり方(いつ、誰が、何を見て決めるか)
  • 給与の仕組み(何が積み上がって、いつ上がるか)

4番目が最も見落とされます。 配属がどう決まるのかを説明していない会社は多い。候補者にとっては入社後の生活を左右する情報なので、決まり方だけでも伝えてください。「いつまでに決まり、誰が決め、希望をどこまで考慮するか」で足ります。

面接を双方向にする

面接の最後に15分を質問の時間として確保してください。5分では足りません。そして、答えにくい質問にも事実で答えます。

事実で答える
  • 「離職率はどのくらいですか」→ 数字で答える
  • 「残業は実際どのくらいですか」→ 月平均と繁忙期
  • 「前任者はなぜ辞めたのですか」→ 言える範囲で理由
  • 「入社して後悔した人はいますか」→ いれば、その理由
やってはいけない答え
  • 「人によりますね」
  • 「アットホームな職場なので大丈夫です」
  • 「そういう質問をされる方は初めてです」
  • 「入ってみないと分からないですよ」

右側の答えは、いずれもその場で候補者の評価を下げるものです。とくに3番目は、質問したこと自体を責める形になっています。

まとめ

  • 新規大卒の3年以内離職は33〜35%前後。宿泊・飲食では5割超
  • ミスマッチの発生源は4つ。すべて採用側の情報設計で起きている
  • 都合の悪いことを開示すると、応募は減り、辞退と早期離職はもっと減る
  • 導入する前に、評価する数字を応募数から変える
  • 欠点は単独で書かない。事実と対処を並べ、数字を入れる
  • 開示するのは5項目。とくに「配属の決まり方」を忘れない
  • 面接の最後に15分。答えにくい質問に事実で答える

辞退を減らす連絡の設計は、関連記事にまとめています。

よくある質問

採用のミスマッチはなぜ起きるのですか。
相性の問題ではなく、入社前に渡した情報の不足と誤りが原因です。発生源は4つあります。①仕事の中身を抽象的に伝えた②都合の悪い条件を伝えなかった③面接で会社側だけが評価した④配属先が決まる前に入社を決めさせた。いずれも採用側が作っています。
都合の悪いことを書くと応募が減りませんか。
減ります。ただし、辞退率と早期離職率のほうが大きく下がるため、最終的に採用できる人数は変わらないか増えます。評価する数字を応募数から「在籍月あたり採用費」に変えると、この判断が正しいことが数字で説明できます。応募数を目標にしている限り、この施策は選べません。
欠点はどう書けばいいですか。
事実と、それに対する会社の対処を必ず並べて書いてください。「繁忙期は残業が月30時間程度あります。そのぶん閑散期は定時退社が基本で、連休も取りやすくなっています」という形です。欠点だけを単独で書くと、応募が過度に減ります。逆に対処だけを書くと、隠していると読まれます。
面接でも同じことをすべきですか。
はい。面接は会社が候補者を評価する場だと考えられていますが、候補者も会社を評価しています。片方向にすると、候補者は聞きたいことを聞けずに入社し、あとでずれます。面接の最後に必ず15分を質問の時間として確保し、答えにくい質問にも事実で答えてください。
Sources 出典
  1. 新規学卒就職者の離職状況(厚生労働省) https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177553_00007.html
  2. 3年以内離職率の推移(JILPT) https://www.jil.go.jp/kokunai/blt/backnumber/2025/12/kokunai_02.html
  3. 採用ミスマッチの原因と対策(パーソルビジネスプロセスデザイン) https://www.persol-bd.co.jp/service/hrsolution/s-hr/column/decline-job-offer/
  4. 採用課題ランキング(Bellwether/キャリタス) https://www.career-tasu.co.jp/press_release/12383/
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