社員の発信を禁止すると、リスクは残って利益だけ消えます

禁止しても発信は止まりません。鍵アカウントや匿名に移るだけです。会社は内容を把握できなくなり、採用で使えたはずの材料だけが消えます。

Key figure
3 未公表情報を書かない/顧客が特定できる情報を書かない/他社・他者を評価しない。この3行を外れなければ、あとは自由でよい。長い規程は読まれない。
出典:carasu の整理
こんな状態なら、この記事です
  • 社員が個人アカウントで会社の話をしていて、止めるべきか迷っている
  • 会社の公式アカウントを作ったが、ほとんど読まれていない
  • 社員に発信を頼んだら、会社の宣伝のような文章になった

1つ目は禁止しない、2つ目は役割を絞る、3つ目は会社が文章を用意しない。それだけです。

01
社員の個人発信を、禁止せずに管理する方法が分かる
02
そのまま社内規程にできる3行のガイドラインが手に入る
03
Xで会社アカウントに残すべき役割が決まる
結論だけ先に

Xは会社の公式アカウントより社員個人の発信のほうが採用に効く。理由は、求職者が知りたいのが会社の主張ではなく働いている人の実感だからだ。だから管理の方法は「禁止」ではなく「範囲の明示」になる。禁止すると発信は鍵アカウントや匿名に移るだけで、リスクは下がらず会社の利益だけが消える。書いてよい範囲は3行で決まり、会社アカウントには募集要項の一次情報と社員投稿の受け止めという2つの役割が残る。

  • Xでは会社アカウントより社員個人の発信が効く
  • 禁止しても発信は止まらない。匿名に移るだけでリスクは残る
  • 範囲は3行で決まる。未公表情報・顧客特定・他者評価の禁止
  • 会社アカウントの役割は募集要項の一次情報と、社員投稿の受け止め

Xの採用活用について相談を受けると、最初に出てくるのは「会社アカウントで何を投稿すればいいか」です。

順番が違います。Xで先に決めるべきなのは、社員個人の発信をどこまで許すかです。

理由は単純で、Xでは会社の言葉がほとんど読まれないからです。求職者がXで読みたいのは会社の主張ではなく、そこで働いている人の実感です。

そして「禁止する」は、いちばん損な選択になります。

Xでは、会社の言葉が読まれない

Z世代のX利用率は66.8%(出典1)。数字としては高いのですが、業界研究で使われる割合は他のSNSより低く出ます。Xは「会社を調べる場所」ではなく「人の話を読む場所」だからです。

要点

求職者がXで読みたいのは、会社の主張ではなく、そこで働いている人の実感です。したがって、Xの採用活用における主役は会社アカウントではなく、社員個人のアカウントになります。これは運用上の判断で、調査で証明された数字ではありません。ただし、会社アカウントの投稿が読まれない現象は広く観察されています。

ここから、Xの論点は自動的に「管理」の話になります。

社員アカウント(主役) ・失敗して学んだこと ・仕事の細部(工程・道具・判断) ・入社前の想像との違い ・他部署の地味な仕事 禁止は3つだけ 未公表情報/顧客特定/他者評価 会社アカウント(役割は2つ) ① 募集要項の一次情報を固定表示  紹介されたときの確認先になる ② 社員の投稿を引用して受け止める  会社が認めていることが外から分かる 日常の話題は投稿しない ほとんど読まれないため
図1:Xでの役割分担。会社アカウントは発信の主役ではなく、確認先と受け止め役です。
Z世代のSNS利用率
YouTube86.1%
LINE85.8%
Instagram71.6%
X(旧Twitter)66.8%
TikTok52.8%

Xの利用率は66.8%と高い一方で、業界研究の調査では上位に出てきません。Xは「会社を調べる場所」ではなく「人の話を読む場所」です。

出典(サイバーエージェント次世代生活研究所)

禁止は、いちばん損な選択

社員の発信を禁止すると、次のことが起きます。

禁止した結果 実際に起きること
発信が止まる(期待) 止まらない。鍵アカウントや匿名アカウントに移る
リスクが下がる(期待) 下がらない。会社が把握できなくなる分、悪化する
統制が効く(期待) 効かない。規程に反する発信は隠れて続く
採用で使えたはずの材料だけが消える
禁止しても発信は止まりません。
見えない場所に移るだけです。リスクは残り、利益だけが消えます。

範囲は3行で決まる

長い規程は読まれません。3行にしてください。

社員の個人発信ガイドライン(3行版)
① 未公表の情報を書かない(新店・新商品・数字・人事・取引先)
② 顧客が特定できる情報を書かない(写真の背景・予約内容・会話の引用)
③ 他社・他者を評価しない(比較・批判・順位付け)

この3つを外れなければ、あとは自由でよい。「会社の良いところを書いてください」を入れないのが要点です。 入れた瞬間に宣伝になり、読まれなくなります。

3行に加えて、会社側がやること
  • ガイドラインを、入社時ではなく「発信を始めた人に」個別で渡す
  • 会社アカウントから、社員の投稿を引用して補足する(承認の意思表示になる)
  • 迷ったときに聞ける相手を1名決めて名前で伝える(「広報まで」ではなく実名)
  • 問題のある投稿を見つけたら、公開の場で指摘しない(個別に伝える)
  • 退職した社員の過去投稿を削除させない(できないし、やろうとすると悪化する)
注意

いちばん多い事故は、会社が社員の投稿を公開の場で訂正・注意することです。やり取りが第三者に見えている状態で指摘すると、それ自体が「風通しの悪い会社」の証拠として読まれます。指摘は必ず個別に、記録の残る形で行ってください。

何を書いてもらうと採用に効くか

指示はしないが、話題の例を渡すのは有効です。読まれるのは、うまくいかなかった話です。

読まれる
  • 失敗して学んだこと(具体的に)
  • 仕事の細部(工程・道具・判断の理由)
  • 入社前に思っていたことと違った点
  • 他部署の人がやっている地味な仕事
読まれない
  • 会社の受賞・実績の告知
  • 「良い会社です」という総評
  • 会社が用意した文章の転載
  • 飲み会・イベントの写真だけ

会社アカウントに残る2つの役割

社員が主役でも、会社アカウントは要ります。ただし役割は2つだけです。

募集要項の一次情報を置く
求職者が他人に紹介するとき、引用元が必要になります。「◯◯職を募集しています/勤務地/条件/応募先」を固定表示にしておくと、社員の投稿から確認先として機能します。
社員の投稿を受け止める
社員の投稿を引用して一言添える。これだけで、会社がその発信を認めていることが外から分かります。社員側も安心して続けられます。日常の話題を会社アカウントから発信するより、こちらのほうが効果があります。

発信する社員がいない場合

無理に始めさせないでください。義務で書かれた文章は、読めば分かります。 逆効果になります。

この場合、Xは使わずにYouTubeとInstagramへ寄せる判断が正しい。媒体は、社内にある材料で決めてください。 流行で決めると続きません。

まとめ

  • Xでは会社の言葉より、社員個人の発信が読まれる
  • 禁止は最も損。発信は匿名に移り、リスクは残って利益だけ消える
  • 範囲は3行。未公表情報・顧客特定・他者評価をしない
  • 「良いところを書いて」は入れない。宣伝になった瞬間に読まれない
  • 指摘は必ず個別に。公開の場での訂正は会社の評判を落とす
  • 会社アカウントの役割は、募集要項の一次情報と社員投稿の受け止め
  • 発信する社員がいなければXは使わない。材料で媒体を決める

炎上を防ぐ運用全体は、関連記事にまとめています。

よくある質問

社員の個人アカウントでの発信は禁止すべきですか。
禁止しないでください。禁止しても発信は止まらず、鍵アカウントや匿名アカウントに移るだけです。その状態では会社は内容を把握できず、リスクだけが残って採用上の利益が消えます。書いてよい範囲を明示するほうが、リスクは下がり、しかも採用の材料が増えます。
社員に発信を頼むと、会社の宣伝みたいになりませんか。
会社が文章を用意すると必ずそうなります。指示するのは範囲だけにして、内容は本人に任せてください。求職者は「宣伝かどうか」をかなり正確に見分けます。読まれるのは、うまくいかなかった話や、仕事の細部についての具体的な話です。
会社の公式アカウントは要らないのですか。
必要ですが、役割は限定されます。募集要項の一次情報を置く場所(求職者が引用できるようにする)と、社員の投稿を受け止める場所(引用して補足する)の2つです。ここに日常の話題を投稿しても、ほとんど読まれません。
発信してくれる社員がいません。
会社が頼む前に、すでに発信している社員がいるかを確認してください。いる場合は「範囲」を伝えるだけで済みます。いない場合、無理に始めさせないでください。義務化した発信は不自然になり、逆効果です。この場合はXを使わず、YouTubeとInstagramに寄せてください。
Sources 出典
  1. Z世代のSNS利用率(サイバーエージェント次世代生活研究所) https://www.cyberagent.co.jp/news/detail/id=32772
  2. 採用関連のSNS炎上と運用上の注意点(AdverTimes/PRESNS) https://presns.jp/column/sns-saiyo-tyuuiten/
  3. 企業のSNSリスクと運用体制(NTTドコモビジネスX) https://www.nttcoms.com/service/social/column/sns-risk/
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