事故の型は4つ。3つは公開前に止まります

採用SNSの事故は運ではありません。4つの型に収まり、うち3つは公開前のチェックで止まります。残る1つだけが、半年後に退職者の言葉として返ってきます。

Key figure
4 採用に関わるSNSの事故は「盛りすぎ」「内輪ノリ」「個人の露出」「無許可の写り込み」の4つでほぼ説明できる。うち3つは公開前チェックで止まる。
出典:carasu の整理(事例の類型化)
こんな状態なら、この記事です
  • 役員に「炎上したらどうするんだ」と聞かれて、答えを用意できていない
  • 現場に撮影を頼みたいが、何を撮ってよいか自分でも決めていない
  • 出演した社員が辞めたときの扱いを決めないまま公開している

3つとも、A4半枚の禁止事項を先に作るだけで消えます。

01
採用SNSで起きる事故の型が4つに整理できる
02
そのまま社内規程にできる運用ルール7つが手に入る
03
公開前に見るチェックリストで、判断を担当者1人に背負わせなくなる
結論だけ先に

採用関連のSNS炎上は毎年発生しており、SNSではネガティブな話題のほうが速く広く伝わる。ブランドが客単価を支えている業態では、採用のための1本が本業の売上に跳ね返る。事故は「盛りすぎ」「内輪ノリ」「個人の露出」「無許可の写り込み」の4つの型でほぼ説明でき、いずれも公開前に止められる。担当者の感覚に依存させず、禁止事項と承認経路を先に文書化するのが唯一の予防策だ。

  • 炎上の型は4つ。どれも「公開前」に止められる種類の事故
  • 禁止事項を先に文書化する。判断を現場と担当者に背負わせない
  • 承認は2名・24時間以内。1名だと止まらず、3名だと投稿が死ぬ
  • 起きたときの初動を先に決めておく。消すか残すかは事前に基準を作る

役員会でSNS採用の話を出すと、ほぼ必ずこの質問が来ます。

「炎上したらどうするんだ」

ここで「気をつけます」と答えると、決裁は下りません。気をつけることは対策ではないからです。

採用に関わるSNSの炎上は毎年起きています。しかもSNSでは、ネガティブな話題のほうが良い話より速く、広く伝わります。だから懸念そのものは正しい。変えるべきなのは、答えの形です。

役員会で言えるようにする答え

「事故は4つの型に収まります。うち3つは公開前チェックで止まります。残る1つは『盛らない』ことで防ぎます。禁止事項はこのA4半枚です」

以下が、その中身です。

事故の型は4つ

数年分の事例を並べると、採用に関わるSNSの事故は次の4つでほぼ説明できます。逆に言えば、この4つを塞げば大半は起きません。

何が起きるか 起きる原因
① 盛りすぎ 入社後に「話が違う」となり、退職者が実態を書く 良く見せることを目的にした
② 内輪ノリ 社内では笑えるが、外から見ると品位を欠く 判断が現場の感覚だけ
③ 個人の露出事故 出演した社員が個人を特定され、退職後も残る 撮影時に用途と期間を説明していない
④ 無許可の写り込み 顧客・取引先・第三者の顔や情報が入る 撮影場所のルールがない
公開前チェックで止まる → 止まらない 影響 大 影響 小 ④ 無許可の写り込み 顧客・第三者。信用の問題になる ② 内輪ノリ 品位を欠く。判断が現場の感覚 ① 盛りすぎ 半年後に退職者の言葉で返る ③ 個人の露出事故 退職後も残る。同意の取り方の問題
図1:事故の4類型。①だけが公開前チェックで見つからないため、防ぐ方法は「盛らない」しかありません。

①だけは性質が違うことに注意してください。①は投稿の瞬間には何も起きません。半年後、1年後に、辞めた人の言葉として跳ね返ります。だから公開前チェックでは見つかりません。防ぐ方法は「盛らない」しかありません。

注意

もっとも損害が大きいのは④です。宿泊・料飲・美容では、撮影範囲に顧客がいます。顧客の写り込みは炎上より前に「信用の問題」になります。撮影可能な場所・時間帯を先に決め、紙にして現場に貼ってください。

この記事で決める4つの数字

7

運用ルールの上限。増やすと読まれない

carasu の整理

2

公開前の承認者。1名だと客観性が働かない

24時間

承認の返答期限。返らないと現場が出さなくなる

8項目

公開前チェックの数

7つの運用ルール

そのまま社内規程に落とせる形で書きます。7つより増やさないでください。 増やすと読まれず、読まれないルールは存在しないのと同じです。

禁止事項を先に文書化する(1枚・10行以内)
「やっていいこと」ではなく「絶対にやらないこと」を書きます。例:顧客が写る場所での撮影/未公表情報/他社比較/音楽の流用/社員の私生活/年収や評価の具体/流行の型に合わせた自虐。禁止が決まっていれば、それ以外は現場が判断できます。
承認は2名・24時間以内に返す
1名だと客観性が働かず、3名以上だと承認が終わりません。2名のうち1名は必ず「ブランドを守る側」(広報・マーケ)を入れます。返答期限を決めるのが要点です。返ってこないと現場は次から出さなくなります。
出演は書面で同意を取り、退職後の扱いまで決める
用途(採用のみか/広告に使うか)、掲載期間、退職した場合の取り下げ可否を書面に含めます。ここを口頭で済ませると、退職時に必ず揉めます。取り下げの申し出には応じる、と決めておくほうが結果的に協力を得られます。
撮ってよい場所・時間を地図と時間帯で決める
「顧客がいなければOK」は運用できません。バックヤードは可、客席は営業時間外のみ可、といった形で場所と時間で切ります。判断を現場の目に委ねないのが目的です。
社員の個人発信は「禁止」ではなく「範囲」で示す
禁止しても発信は止まりません。未公表情報を出さない/顧客が特定できる情報を出さない/他社や他者を評価しない、の3点だけ決めます。範囲が明確なほど、社員の発信は採用で強く効きます。
盛らない。都合の悪いことを1つ書く
残業がある、繁忙期は休みが取りにくい、最初の半年は雑務が多い。こうした事実を先に出すと、応募数は少し落ちて、辞退と早期離職が落ちます。①の事故を防ぐ唯一の方法でもあります。
起きたときの初動を、起きる前に決める
誰が一次判断するか、削除の基準、社内への周知、返信するか静観するか。当日に議論を始めると必ず遅れます。A4半枚で足ります。

公開前チェックリスト

投稿を出す直前に見るものです。担当者1人の感覚に判断を背負わせないために存在します。

公開前に見る8項目
  • 顧客・第三者が写っていないか(背景の鏡・窓・モニターも見る)
  • 出演者の同意が書面で取れているか
  • 未公表の情報が映っていないか(掲示物・PC画面・書類)
  • 音源の利用範囲が商用で問題ないか
  • 他社・他業界・他者を下げる表現になっていないか
  • 入社後に「話が違う」と言われる誇張がないか
  • 自社の既存顧客が見ても違和感がないか(ブランドの確認)
  • コメント欄が荒れたときに誰が対応するか決まっているか

7項目目が採用SNS固有の観点です。採用のための投稿は、必ず顧客にも見られます。 顧客が見て「この店は雰囲気が変わった」と感じるものは、応募が増えても出さないほうがいい。

採用の投稿は、採用の人だけが見るものではありません。
いちばん多く見ているのは、既存の顧客です。

それでも起きたときの初動

型を作っておきます。判断より速度が重要になる場面なので、迷う要素を減らすのが目的です。

時間 やること
〜1時間 投稿の追加をすべて止める(予約投稿の停止を含む)
〜3時間 事実確認。誤認・権利侵害があるかを切り分ける
〜6時間 誤認・権利侵害あり=削除して削除の事実を残す/表現の受け止め=説明を優先
〜24時間 社内(とくに出演者と現場)へ先に共有する。外向けより先
翌週 禁止事項を1行追記する。人を責めずルールを直す

最後の行が効きます。事故のあとに人を責めると、二度と誰も撮影に協力しません。 直すのはルールです。

まとめ

  • 炎上の型は4つ。うち3つは公開前チェックで止まる
  • 「盛りすぎ」だけは公開前に見つからない。盛らないことが唯一の予防
  • 禁止事項を先に1枚、承認は2名・24時間以内
  • 採用の投稿は既存顧客も見る。ブランドの確認をチェック項目に入れる
  • 初動の型を先に作る。人を責めずルールを直す

崩さない前提でどう設計するかは、柱記事にまとめています。

よくある質問

採用SNSで炎上すると、実際どんな損害が出ますか。
応募が止まるだけでは終わりません。ブランドが客単価を支えている業態(宿泊・料飲・美容・アパレルなど)では、採用のために出した1本が既存顧客の目に入り、本業の予約・来店・価格の納得感に影響します。加えて、在籍している社員の士気と、その家族からの見え方にも及びます。採用単独の問題として扱わないでください。
社員が個人アカウントで会社の話をしています。止めるべきですか。
禁止すると発信は地下に潜るだけで、リスクは下がりません。禁止ではなく「書いてよい範囲」を明文化してください。具体的には、未公表の情報(新店・数字・人事)を出さない、顧客が特定できる情報を出さない、他社・他者を評価しない、の3点で足ります。範囲が決まっていれば、社員の発信は採用でもっとも強い材料になります。
投稿前チェックを何人でやるべきですか。
2名です。1名だと客観性が働かず、3名以上にすると承認が終わらず投稿が止まります。うち1名は「ブランドを守る側」(広報・マーケ)を必ず入れてください。24時間以内に返す運用を決めておくと、現場の投稿意欲が落ちません。
万一炎上したら、投稿は消すべきですか。
事実誤認や権利侵害があれば速やかに削除し、削除した旨を残してください。表現の受け止め方の問題である場合は、消すこと自体が「隠した」と読まれるため、削除より説明を優先します。この判断基準を事前に決めておくことが重要です。当日に議論を始めると、対応が遅れてそれ自体が問題になります。
Sources 出典
  1. 採用関連のSNS炎上が絶えない状況(AdverTimes/PRESNS) https://www.advertimes.com/20241025/article478174/
  2. 炎上はポジティブ情報より広まりやすい(WEBブランディング研究所/エルテス) https://eltes-solution.jp/column/digitalrisk-7
  3. 企業のSNSリスクと運用体制(NTTドコモビジネスX) https://www.nttcoms.com/service/social/column/sns-risk/
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