時給を上げても定着しません。飲食の採用は「在籍月」で見ます
1人あたりの採用費を下げても、4か月で辞められたら実質のコストは6倍です。見る数字を変えると、選ぶ施策が変わります。
- 求人に出しても応募が来ない。時給を上げるしかないのかと思っている
- 採用してもすぐ辞めるので、毎月求人費が出ていく
- 店長にSNSを任せたが、1か月で止まった
3つ目は店長の問題ではありません。運用ごと任せた設計の問題です。
飲食店で働く従業員の有効求人倍率は約2.89倍、年間離職率は26.6%で全産業平均を大きく上回る。この条件下で採用単価だけを下げると、早期離職で費用が消えて総額は増える。見るべきは在籍月あたりの採用費で、これを改善する施策は応募数を減らすことがある。アルバイトは「応募のしやすさ」、社員は「将来の見え方」で設計が分かれる。店舗単位で回すために、店長の負担を増やさない形を示す。
- 有効求人倍率は約2.89倍。全職種平均の2倍以上
- 年間離職率26.6%。採用単価を下げても定着しなければ総額は増える
- アルバイトは応募のしやすさ、社員は将来の見え方で設計が違う
- 店長の負担を増やす仕組みは必ず止まる。素材集めだけ頼む
飲食店の採用相談で、最初に出てくる質問はほぼ決まっています。
「求人にいくらかければいいですか」
この質問には答えられます。ただし、その前に見る数字を変える必要があります。
有効求人倍率2.89倍は、求人およそ3件に対して求職者1人という状態です。時給を上げて競り合う以外の打ち手が要ります。
出典1(二次情報)。棒は3.0倍を上限として描いています。
採り合いが厳しく、しかも残らない。この2つが同時に起きているので、採用単価だけを下げる施策は総額を増やします。 安く採って早く辞められると、翌月また採用費が発生します。
加えて、飲食店の年間離職率は26.6%(出典2・二次情報)。全産業平均の15%前後を大きく超えています。新規大卒者の3年以内離職率も、宿泊業・飲食サービス業では55.4%という水準です。
見る数字を置き換える
採用単価40万円で在籍4か月なら月10万円。同じ40万円で在籍24か月なら月1.7万円。実質のコストは6倍違います。
この数字で見ると、施策の評価が変わります。
| 施策 | 応募数 | 在籍月あたり採用費 |
|---|---|---|
| 時給を相場より高く見せる | 増える | 悪化しやすい(条件で来た人は条件で辞める) |
| 「アットホームな職場」と書く | 変わらない | 変わらない(読まれていない) |
| 実際のシフト例を見せる | やや減る | 改善する |
| 覚えることの量を先に見せる | 減る | 大きく改善する |
| 面接前に店を見学してもらう | 減る | 大きく改善する |
下2つは応募数を減らします。 それでも正解です。応募数を目標に置いていると、この2つが選べません。
「まず応募を増やしてから質を上げる」という順番は、飲食では機能しません。応募が増えると面接と教育の工数が増え、そのぶん現場が荒れ、離職が加速します。順番は逆で、合う人だけが応募してくる状態を作ってから量を増やすのが正しい。
だから「1人あたりいくら」で見ると判断を誤ります。在籍月あたりで見てください。
出典1・2・3(二次情報を含む。全産業の年間離職率は一般的な水準)
アルバイトと社員で設計を分ける
同じ店の採用でも、見ている場所が違います。ここを混ぜると、どちらにも刺さりません。
- シフトの融通(週何日から入れるか)
- 一緒に働く人の年齢層
- 覚えることの量と、覚える期間
- 初日に何をするか
- まかない・交通費の実際
- 何年で何ができるようになるか
- 店長・料理長までの道筋
- 独立を支援するのかしないのか
- 休みの取り方(連休が取れるか)
- 会社が次に何をしようとしているか
社員側で最も効くのは「独立を支援するのかしないのか」です。 飲食を志望する人の多くが将来の独立を考えているため、ここを曖昧にすると入社後に必ずずれます。支援しないなら、しないと書いてください。そのほうが合う人が来ます。
店舗で回す形
店長に運用を任せると止まります。頼むのは素材だけです。
撮るもの(飲食店の10本)
- 仕込みの手元(顔を出さずに成立する)
- 1か月分の実際のシフト例(個人名は消す)
- 初日にやること(覚えることの量を正直に)
- まかない(実物・毎日出るのかどうか)
- 忙しい時間帯の実際の様子
- 閉店後の片付けと、実際に上がる時間
- 未経験で入った人の3か月目
- スタッフの年齢構成(写真で分かるように)
- 店長が1日何をしているか
- この店が今変えようとしていること
6番目を出せる店は強い。「何時に上がれるか」は、応募前にいちばん知りたくて、いちばん書かれていない情報です。
閉店後に何時に帰れるかを見せる1本です。
まとめ
- 有効求人倍率は約2.89倍、年間離職率26.6%。採るのも残すのも難しい
- 採用単価ではなく「在籍月あたり採用費」で見る
- 応募数を減らす施策が正解になる場面がある。応募数を目標にしない
- アルバイトは応募のしやすさ、社員は将来の見え方で分ける
- 「独立を支援するか」を曖昧にしない
- 店長に運用を任せない。素材だけを月1回15分で頼む
- 応募は本部を通さず店舗へ直接つなぐ
多店舗での本部と店舗の分担は、関連記事にまとめています。
よくある質問
飲食店の採用コストはいくらぐらいですか。
アルバイトと社員で発信を分けるべきですか。
店長にSNSを任せていいですか。
求人媒体をやめてSNSに切り替えられますか。
- 飲食店の有効求人倍率・人手不足の状況(みんなの採用部/マイナビグローバル) https://global-saponet.mgl.mynavi.jp/know-how/13502(二次情報)
- 飲食店の離職率と採用・育成コスト(マネーフォワード クラウド) https://biz.moneyforward.com/restaurant/basic/2944/(二次情報)
- 新規学卒就職者の離職状況(厚生労働省) https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177553_00007.html
- 人手不足に対する企業の動向調査(帝国データバンク) https://www.tdb.co.jp/report/economic/20260220-laborshortage202601/